August 7, 2013 Press release

東京大学生産技術研究所、海上技術安全研究所、九州工業大学による共同記者会見

「海底土セシウム137アノマリーの発見と分布調査」

1.発表日時:

平成25年8月7日(水)10:30~11:30(受付開始 10:00) 

2.発表場所

東京大学生産技術研究所 研究棟An棟大会議室(An301・302)

〒153-8505 目黒区駒場4-6-1 駒場リサーチキャンパス

http://www.iis.u-tokyo.ac.jp/access/access.html(参照)

3.発表者:

ソーントン ブレア(東京大学生産技術研究所 特任准教授)

浦 環(海上技術安全研究所 水中工学センター長/

九州工業大学社会ロボット具現化センター センター長・特任教授)

小田野 直光(海上技術安全研究所 海洋リスク評価系長)

大西 世紀(同 主任研究員)

4.発表ポイント:

①福島第一原子力発電所の20km圏内および阿武隈川の河口付近で海底土のセシウム137の濃度が局所的に高い状態にある場所(アノマリー:注1)を発見し、広域に渡るアノマリーの分布調査に初めて成功した。

②調査には開発した曳航式放射線計測装置(注2)を用い、福島県・宮城県・茨城県において、総距離約400kmの海底土のセシウム137の分布を連続的に計測した。

③今後の対策を検討する上で、アノマリーの分布、濃度変化、移動の理解は不可欠である。継続的にマッピングを実施し、アノマリーの移動、大きさや濃度の変化を把握して、セシウム137の沿岸域での移動の予測に役立つデータが取得できると期待される。

5.発表概要:

東京大学生産技術研究所(所長:中埜 良昭)のソーントン ブレア特任准教授らの研究グループは、(独)海上技術安全研究所(理事長:茂里一紘)、九州工業大学(学長:松永 守央)と共同で実施した曳航調査の結果、福島第一原子力発電所の20km圏内および阿武隈川の河口付近で海底土のセシウム137の濃度が局所的に高い状態にあるアノマリーを発見し、広域に渡るアノマリーの分布調査に初めて成功した。

 調査には、東京大学生産技術研究所が開発した曳航式放射線計測装置を用い、福島県・宮城県・茨城県において、総距離約400kmの海底土のセシウム137の濃度を連続的に計測した。従来の手法では、セシウム137の海底濃度を細かく捉えることができていなかったが、福島第一原発の20km圏内において140km以上の距離を連続的に計測した結果からは、海底の凹み地形において、セシウム137の濃度が周辺海域の数倍高い状態にある場所が確認され、その範囲は狭い場所では数10m、広い場所では数100m程であり、セシウム137の濃度が海底地形に影響されていることが明らかになった。同様に、仙台湾において220km以上の距離の海底土のセシウム137の濃度を調査した結果、阿武隈川の河口付近で、2km程度の範囲に亘ってセシウム137の濃度が周辺海域より数倍高くなっている場所をマッピングすることに成功した。

今後の対策を検討する上で、アノマリーの分布、濃度変化、移動の理解は不可欠である。このため、福島県沖と仙台湾において継続的にマッピングを実施し、アノマリーの移動、大きさや濃度の変化を把握することで、セシウム137の沿岸域での移動の予測に役立つデータが取得できると期待される。

6.発表内容

背景

文部科学省などでは、定期的に海底土をサンプリングし、放射性物質濃度の分析を行っている。しかし、採用している手法の性質上、数十km離れた点における計測に留まり、計測点間の濃度の変化を細かく捉えることはできない。河川からの放射性物質の流入、海流や波浪による移動などを捕らえるためには水平分解能の高い線的、面的な計測が必要である。国立大学法人東京大学生産技術研究所では、計測点間の濃度の変化を細かく捉えるための装置を開発し、独立行政法人海上技術安全研究所、国立大学法人九州工業大学と共同で、さらに福島県漁業協同組合連合会、福島県水産試験場、宮城県漁業協同組合、宮城県水産技術総合センター、公益財団法人海洋生物環境研究所、独立行政法人水産総合研究センター、芙蓉海洋開発株式会社の協力も得て、2012年8月より2013年7月までの間に、茨城県・福島県・宮城県沖合において総距離約400kmの海底土の調査を実施した。

結果の概要

(1)福島第一原発の20km圏内において、海底の凹み地形で海底土のセシウム137の濃度が、数10mから数100mの範囲で周囲の海底土より数倍高い状態にあるアノマリーが複数発見され、これらの分布のマッピングに成功した。

(2)阿武隈川の河口付近において、海底土のセシウム137の濃度が、2kmの範囲で周囲の海底土より数倍高い状態にあるアノマリーが発見され、マッピングに成功した。

(3)曳航式放射線計測装置で計測された結果を基に海底土をサンプリングすることによって、アノマリーの存在が確認された。

 今後の展開

対策を検討する上で、アノマリーの分布、濃度変化、移動の理解は不可欠である。今後は、福島原子力発電所20km圏内および阿武隈川の河口付近を、継続的に調査する予定である。今後は、連続計測の結果を基にサンプリングポイントの場所を決める戦略的な調査手法が必要である。また、海底地形計測、海底底質調査、海流の調査を実施し、より詳細にアノマリーをマッピングすることによって、汚染メカニズムを詳細に調べ、沿岸域でのセシウム137の移動の予測に役立つデータを取得することが期待される。

7. 附記

本研究の一部は、三井物産環境基金「2011年度復興助成」、内閣府総合科学技術会議「科学技術戦略推進費」の水産庁が代表となる「高濃度に放射性セシウムで汚染された 魚類の汚染源・汚染経路の解明のための緊急調査研究 」の助成を受けて実施された。

記者会見終了後、生産技術研究所において「海の放射能ワークショップ」を開催する。詳細は、下記のホームページを参照。

日時: 2013年8月7日(水):13:00〜17:20

場所: 東京大学生産技術研究所駒場リサーチキャンパス内AN会議棟 

2Fコンベンションホール

URL: http://ocean.iis.u-tokyo.ac.jp/ja/radiation.html

8.用語解説:

(注1)アノマリー:セシウム137の濃度が局所的に周辺海域と比べて異なる場所。

(注2)曳航式放射線計測装置:東京大学生産技術研究所が開発した、海底土中のセシウム137と134を連続的に計測することができる装置。装置に関しては、平成24年9月6日におこなった記者会見「海底土のセシウム134、137濃度を15㎞に渡って連続計測に成功」において報告している。

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以下のリンクより、2013年8月7日に行った記者会見の発表資料がダウンロードできます。

The contents of our press release presentation can be downloaded from the following link (japanese only).

slides: download pdf 


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